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2009年4月23日 (木)

氷の伯爵と桜色の風 ♯3

☆もくじへ☆

アンナが、真っ白なハンカチを差し出している。
「泣かないで。私には、母さまも父さまもいないからわかんないけど、きっと、とても悲しい事なのね」
そう言って、アンナも目を赤くする。
「泣いてなんか無いよ! そう言う君のほうが、必要みたいだよ?」
逆にハンカチを取り出しながら、アンナに差し出し、ジェレミーは不思議な気持ちになっていた。
彼は、母を亡くしたばかりなのに、アンナと話しをしていると、その辛さも幾分和らいでいくからだ。
 彼女の髪の色が、彼の母と同じ色をしているからなのか、それとも彼女の雰囲気に流されたからなのか。
「ありがと……」
ジェレミーから差しだされたハンカチを、素直に受け取り目元を押さえるアンナ。
「君は、父さまも、母さまもいないって言ったけど、どこからきたの?」
そんなジェレミーの問いかけに、黙って彼女が指を差す。
その先にあるのは、教会に併設されている孤児院で、ジェレミーの母、レディ・カークベリーが寄付をしていた場所でもあった。
「そう……」
なぜか、ジェレミーは自分の身分を、アンナに話す事は出来なかった。
同情心からともとれるが、ただ普通の友達でいたかったからだろう。
大概、彼が名前を口にすると、恐縮して友達になれないか、逆に利用しようとして近づいてくるか、のどちらかなのだ。
 二人の間に、短い沈黙が流れる。
しばらくすると、孤児院のほうが騒がしくなっているのに気がつく。
「いっけない! シスターが、気がついちゃったみたい」
そう言い、慌てて立ち上がるところを見ると、どうやら黙って抜け出してきたようだ。
「私、もう行かなきゃ。そうだ、あなたの名前、聞いてなかった」
アンナは立ち去ろうとして、腰を上げながら尋ねる。
「僕? ……ジェレミー」
自分の身分を明かしたくないジェレミーは、ファーストネームだけを口にした。
「そう、ならジェリーね。またね!」
彼の言葉を疑う様子もなく、晴れわたる青空のような笑顔を残し、風のように去ってしまう少女。

最愛の母を無くした日、彼は、不思議な少女に出会った。
今まで会った、どんな女の子とも違って、破天荒で驚かされたけれど、明るく優しい少女だった。
人生で、最悪な一日になるはずだった今日と言う日が、それだけではない、何か特別な日になったような気がしていた。
 そして彼女も、まるで聖書に出てくる天使のように美しい少年との出会いに、まるでいつか聞いた、夢物語の中に迷い込んだような、不思議な感覚に囚われていたのだった。続く

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