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2009年5月 8日 (金)

氷の伯爵と桜色の風 ♯7

☆もくじへ☆

はぁ……なんか、疲れちゃったかも。
 貴族って色々大変なんだな……
アンナは、一人部屋に取り残されて、少し落ち込んだ気分を変えようと、窓の方へと歩いていく。
そこからは、内庭が見渡せるようになっていた。
先ほど馬車から見えた、美しい風景が目の前に広がっている。
バルコニーに出て、清清しい風に吹かれていると、さっきまでの気分も一緒にさらっていってくれるようだった。
 素敵! こんなに綺麗なお庭は、見た事ない!
 貴族の方のお屋敷って、みんなこんなに綺麗なのかな?
孤児院にも庭はあったが、これほどまでに色とりどりの花々が咲き乱れているような美しい庭ではなかった。
そうして、外の景色を楽しんでいると、部屋のドアをノックする音が聞こえてきた。
「はーい。開いてるよ?」
そう答えると、メイド姿の女の子がおずおずと入ってきた。
「失礼します。わ、私、アンナお嬢様の専属メイドになりました、り、リリスと申します。よろしくお願いします」
 専属のメイドさんなんて、いるんだ。びっくり!
あまりにも今までとは違う環境に、多少戸惑いを感じたが、黒縁眼鏡をかけ、漆黒の髪をおさげにしたその少女をみる。
 この子、孤児院にいた少女にちょっと似てるかもしれない。
 大人しそうで、おっとりした感じなんて、そっくり。
そう思えば、すぐに親近感が湧き、バルコニーから部屋の中に戻って、リリスと名乗った少女へと歩み寄る。
「私はアンナ。よろしくね」
そう言って、リリスの手をしっかりと握ると、手が触れた瞬間、リリスは一瞬身をすくめるような仕草を見せた。
なにやら彼女は、とても緊張した様子だ。
 あ……いけない。気軽にこういう事をしちゃダメなんだったっけ?
 さっき執事のギルバートさんに、言われたばっかりなのに、つい今までの感覚で……
「あ、ごめんね? 私、貴族の習慣ってまだ良くわかってなくて……驚かせちゃったよね?」
「い、いえ……大丈夫です。わ、私、田舎から出てきたばかりで、まだまだ不慣れなもので、お嬢様にご迷惑を掛けてしまうんじゃないかと思ったら、ふ、不安で……」
どうやら、アンナの突拍子の無い行動に驚いたというよりも、彼女もこの屋敷に慣れていなくて、緊張しているみたいだった。
「リリス、そんなに緊張しなくて平気だって。そうだ! 私達きっといい友達になれると思うんだけど、どうかな?」
私の言葉に、彼女の表情が柔らかく変化して、ほ~っと詰めていたものを吐き出すかのように息をつくと、やっと笑顔になってくれた。
色々と話を聞けば、田舎とはいえリリスのお父様は、綿織物の工場を経営しているらしく、彼女もそれなりのお嬢様で、カンター男爵家には花嫁修業の為に、メイドとして雇ってもらったのだという。
 それからリリスと私は、大きなクローゼットの扉の前で、数え切れないくらいのドレスに翻弄される事になった。
「ちょっと、このドレスの数って、普通なの?」
目の前にある、白やピンクや青のドレスの数々は、まるでさっき見ていた花が、クローゼットにまで咲いているかのようだった。
私はもちろんの事、リリスも呆然としている。
「どうなんでしょうか……? でも、パトリシアお嬢様が、同じドレスを着ているのを見た事がないので、きっとそういうものなんですよ」
「パトリシア? 妹はパトリシアって言うんだ! あー早く会いたいっ!」
思わぬところから妹の名前を知って、喜びのあまりつい大きな声で言ってしまう。
思わず、辺りを見渡して、部屋の中にはリリスしかいない事を思い出してほっとした。
「今のは、お母様とお父様には内緒にしてね」
いたずらっぽくリリスにお願いすると、彼女は快く承諾してくれた。
 私の専属メイドさんが、リリスみたいな良い子でよかった。
アンナは心底、そう思っていた。
これが熟練したメイドさんだったりしたら、きっと「アンナお嬢様! 男爵令嬢ともあろうお方がなんですか……」とか言って長いお説教が始まったに違いなかったからだ。
 もしかして、これもお父様とお母様の、私に気を使わせない為の配慮なのかもしれない。
 こんな素敵な部屋を用意してくれた事といい、あの素敵なドレスの数々といい、本当に私は良い両親に恵まれていたのね。
そう思えば、家族とまた巡り合えた事を、神様に感謝したい気持ちでいっぱいだった。
「あの、アンナお嬢様。今夜の夕食は何色のドレスになさいますか?」
感慨にふけっていると、リリスから声をかけられた。
彼女はドレスに埋もれそうになりながらも、一生懸命私のために選んでくれようとしていたのだった。
「ごめん、ボーっとしちゃって。そうだなぁ、出来るだけ、レースやフリルの少ないものがいいんだけど……」
「少ないもの、ですか?」
私の言葉に、リリスは意外そうな表情を浮かべている。
「うん。だって、急にレースやフリルのいっぱい付いたドレスなんて着たら、裾を踏むか、どこかにひっかけるかしちゃいそうで……」
理由を告げれば、リリスはクローゼットの中でも、一番シンプルな絹地のピンクのドレスを持ってきてくれた。
「綺麗な髪の色で、どんな髪型でも映えますね。素敵です~」
なんとかきついコルセットも絞め終わり、着替えてリリスに髪を結い上げてもらうと、そこには見知らぬ自分の姿があった。
「ドレスと髪型で、ここまで変わるものなのね。こんなに華やかな格好をするのは初めてで、似合ってるのかも分からないや。変じゃ、ないかな……?」
思わず、鏡に近づいてまじまじと自分の姿を確認するが、見慣れないせいなのか違和感があるようで不安になった。
「すごくお似合いです。きっと男爵様ご夫妻も、アンナお嬢様を誇りに思われますよ」
そんなリリスの言葉に、気恥ずかしさを覚えるが、少し安心できたような気がした。
「それでは、私はこれで。またご夕食の時にお声をかけさせて頂きます」
そう言って、リリスは一礼すると、部屋から出て行った。
 ついに妹、パトリシアに会えるのね。きっと可愛いんだろうな~
 たくさんおしゃべりして、リリスみたいにお友達みたいな姉妹になりたいな。
 私がわからない事も、きっと色々知ってるだろうし、いっぱい教わらなくちゃね。
アンナはリリスが夕食に呼びにくる間中、ついに会える妹に、思いを馳せていたのだった。 続く

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