« どつぼにはまった | トップページ | 怒るのにもエネルギー使います(長文注意 »

2009年6月21日 (日)

氷の伯爵と桜色の風 ♯16

☆もくじへ☆

「はぁ……」
自室に戻ったアンナは、深いため息と共に、完璧にメイクされたベットに身を投げ出す。
 貴族の娘が、生まれながらに許婚がいるのは、珍しいことじゃないって言うのはわかるけど……
 なんで将来、二人のうちどちらか一人、なんて事になるのよ。
アンナの脳裏に、先ほどの父の台詞が蘇る。
『本来ならば、長兄のジェリーを許婚に、という話しだったんだが……ルークが生まれたばかりのお前に、キスをした…………それに最近、ルークとは親しくしているようだったからね。私の方から、カークベリー伯爵にお願いしたんだよ』
 有り得ないっ! たったそれだけの事で、ルークも婚約者になる資格が出来たから、私に選ばせる事にしたなんて!
 しかも、選ぶどころか、勝手に決められるなんて……
アンナが父から聞いた話しは、理解は出来ても、到底納得出来るものではなかった。
 って、言っても……カークベリー伯爵は、私の事なんてなんとも思ってないんだから、結局意味無いけどね……ルークと婚約させようとしてる位だもの、むしろ迷惑だったんだわ。
 聞かなきゃ良かった、あんな話し……二人のうちどちらか、じゃ無くて、最初からルークが婚約者と決まっていたなら、諦めもついたかもしれないのに。
みるみる、アンナの瞳には涙が溢れてくる。
自分の感情に耐えられず、思わず枕に顔を伏せて、声を押し殺し肩を震わせるアンナ。
 こんな状況になって、自分がどれだけカークベリー伯爵に心惹かれていたか、気が付くなんて……
アンナは、ジェリーに対する、激しい恋慕の情が湧き上がって来るのを押さえ切れなかった。
ただ、次々と溢れ出す涙が、枕を濡らしていく。

「アンナお嬢様。失礼します」
どれ位そうしていたのか、部屋の外からノックと共にリリスの声が聞こえて、アンナは慌てて身体を起こし涙を拭う。
「どうぞ、入って」
ベットから起き上がり、乱れた髪形を整えながらアンナがそう言うと、リリスがスコーンやケーキの乗ったスタンドを、ワゴンに乗せて入ってきた。
「アンナお嬢様、お茶会の続きをしませんか?」
リリスは、目を真っ赤に充血させているアンナの様子には触れずに、笑顔を向けている。
それが彼女なりの気遣いだと知っているアンナは、素直に頷いてテーブルに向かい、椅子に座った。
「今日は、キャットニップのハーブティをご用意致しました。リラックス効果があるそうですよ」
カップに注がれた紅茶から漂う爽やかな香りが、アンナの高ぶった感情を、少しずつ解きほぐしていくようだった。
 リリスにも、心配かけちゃってるね。でも今は、もう少し甘えさせてね。
 彼女の心地良い優しさに浸っていたいから。
ゆっくりと紅茶を飲み、少しずつ気分が落ち着いてきた様子のアンナは、リリスに自分の初恋の話しを語り始めた。
「私ね…………」
――幼い頃の、恋とも言えぬような淡い想い。それは成長した今でも、心に残る大切な思い出で、初恋の少年が、ジェリーかルークのどちらかかもしれないという事。その時のハンカチは、今でもお守りのように大切にしている事――
リリスに聞かせるというよりは、口に出して語る事で、自分の気持ちの整理をつけているかのように見えた。 続く… 

1クリックが元気の素です♪        TOPに戻る

|

« どつぼにはまった | トップページ | 怒るのにもエネルギー使います(長文注意 »

小説」カテゴリの記事

コメント

ルーク様へ

リリスを嫁にしたほうが幸せになれるかもしれない。(いけない、また男目線になってしまった)

投稿: 狼皮のスイーツマン | 2009年9月12日 (土) 15時07分

>いき♂様

>リリス優しいなぁ(^^)
ここでは、影でアンナを支えているリリスのキャラを出したかったので、そう言って頂けると嬉しいです^^
アンナの心理状態が上手く書けずに悩みました(^-^;

投稿: 柊かえで | 2009年6月22日 (月) 16時33分

リリス優しいなぁ(^^)

アンナのような正直な子が、自分の気持ちを押し殺そうと葛藤している様子はせつなくてもどかしいです><

投稿: いき♂ | 2009年6月22日 (月) 12時58分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 氷の伯爵と桜色の風 ♯16:

« どつぼにはまった | トップページ | 怒るのにもエネルギー使います(長文注意 »