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2009年6月28日 (日)

氷の伯爵と桜色の風 ♯17

☆もくじへ☆

 楽しげなバースディパーティから一変、着飾った大人達のただならぬ雰囲気。取り乱している男爵夫妻の顔。
そして「僕のせいだ……」という強い自責の念。
 今もジェリーの記憶に残る、悪夢の日……

 その日は、カンター男爵夫妻の2歳になる令嬢、アンナのバースディパーティが開かれていた。
カンター男爵家の広い庭は、招待客で埋め尽くされていた。
もちろんそこには、幼き日のカークベリー兄弟の姿もあった。
 その日の主役のアンナは、カンター男爵夫人に抱かれながら来客に笑顔を振りまいていたが、しばらくすると飽きてしまったようで徐々にグズり始めたのだった。
まだ2歳の少女にとってパーティは、意味も分からず退屈なものでしかなくなってしまっていた。
カンター男爵夫人は、抱かれているのが嫌で暴れるアンナを、仕方なく芝生の上に降ろした。
と、次の瞬間、小さな少女は解放された事に喜び、人ごみの中を駆け出して行く。
「あっ! アンナ待ちなさい」
「叔母様、僕とルークで見てるから大丈夫だよ」
慌てて娘の後を追おうとするカンター男爵夫人に、良く知った少年――ジェリーがそう声をかけた。
 勝手知ったるなんとやらで、ジェリーは弟のルークと共に、大人達の間を縫ってアンナの後を追う。
まだヨチヨチと歩く彼女には、すぐに追いつく事が出来た。
そのまま3人は裏庭へと向かい、遊び始めたのだった。
「兄さん、追いかけっこしようよ」
ジェリーは、弟のルークに誘われ、何気なく始めた遊びに夢中になっていた。
まだ上手く走ることが出来ないアンナは、すぐ側にある花畑に座って、楽しそうに二人の様子を眺めていた。
はずだった……
 二人が一瞬目を話した隙に、さっきまでそこにあったはずの幼い少女の姿は消えていた……
 
「アンナッ!」 
奈落の底に引きずり込まれるような感覚に目を覚ますと、そこは自室のベットの上だった。
ベットの上で身を起こしたジェリーの額には、冷たい汗が噴き出していた。

 今更、あんな夢を見るなんて……
 アンナのことは、ルークに任せておけばいいんだ。

「生きてまた、戻ってきてくれただけで十分じゃないか。それ以上、何を望むというんだ……」
ジェリーは、自分に言い聞かせるようにそう呟く。
 
 自分自身で決めたことを迷うなんて、俺らしくも無い。
 
 数年ぶりに見た悪夢の余韻を拭い去るように、額の汗を拭い、部屋のバスルームに向かう。
いつもなら秘書のケネスが起こしに来るのだが、今日は彼が部屋に来た時には、完全に外出する支度は整っていた。
「出かける、馬車をまわしてくれ」
支度を済ませたジェリーは、ケネスにそう言い玄関ポーチへと向かった。
 広く長い廊下を歩いて行くと、ルークの部屋のドアが見えてくる。

 あいつが怒ったところを見たのは、何年振りだろうな……
 子供の時以来か? そのせいで、あんな夢を見たのかもしれないな。

ジェリーは苦笑を浮かべ、また歩き出した。
 主人の言葉に忠実なケネスは、ジェリーが玄関先に出てきたときにはすでに、馬車と共に待機していた。
「私用だ。今日は一人で行く」
主人を馬車に乗せ、逆側に周り込もうとするケネスを呼び止め、そう指示する。
「いってらっしゃいませ」
ジェリーと常に行動を共にしていた彼は、主人の普段に無い言葉に僅かに訝しげな表情をしながらも、一歩下がって見送る姿勢をとった。
「ハーヴェイ孤児院に、行ってくれ」
ケネスに見送られ馬車に乗り込んだジェリーは、従者に行き先を告げた。続く

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コメント

>いき♂様
ジェリー、アンナはどうなっていくのでしょうね^^
次話も楽しんでいただけたら嬉しいです。

投稿: 柊かえで | 2009年6月28日 (日) 21時52分

ジェリーは孤児院に何をしにいくのか気になります。
そしてジェリーとアンナの関係は今後……?

投稿: いき♂ | 2009年6月28日 (日) 13時11分

>長嶺えり子様

そうだったんです
今回は初のアンナ以外の視点で、予想以上に苦労しました(゚ー゚;
やっとお話しも終盤にさしかかってきた感じです(タブン
柊は、あと5話くらいかな~?って考えています。
次回はアンナ視点に戻ります^^

投稿: 柊かえで | 2009年6月28日 (日) 10時06分

今回はアンナの子供時代のお話ですね。


なるほどこういう状況だったのですね。
そしてジェリーにはアンナがいなくなったのは自分のせいだと
自分をせめていたのですね。

ジェリーのアンナに対する気持ちがだんだん明らかにされていきますね。
私としては二人を仲良くさせたいっ!!って気持ちで読んでます。
次回も楽しみにしてますね!!

投稿: 長峯えり子 | 2009年6月28日 (日) 04時10分

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