« 怒るのにもエネルギー使います(長文注意 | トップページ | うっかり »

2009年6月23日 (火)

短編 「花火」

この小説は、他ブログに載せていたものをこちらに移したものです
恋愛 青春 甘酸っぱい 片思い といったような内容になってます。興味を持たれた方はどうぞ^^グググっと下のほうへ

☆もくじへ☆

「ねえねえ。明日さ、みんなで花火やらない?」
長かった夏休みも終わろうとしていたある日、美沙がそんなことを言い出した。
「花火? いいけど、どうしたの急に?」
「もうすぐ夏休みも終わりだし、なんか思い出が欲しいじゃん?」
 言われてみれば、今年の夏休みは特に何もする事がないまま、なんとなく過ぎていった感じかも。
 彼氏でもいれば、何か変わったのかもしれないけどさ。
「岡田君も誘おうよ」
 え……?岡田君?!
「ちょ、ちょっと待ってよ。なんでそこに岡田君の名前が出てくるかな」
私の言葉に、美沙はニヤニヤしている。
 なんだろうね、この顔は……
「私にまで隠すんだ? ほ~、知ってるんだからね」
 ギクッ…… 
暑さのせいじゃなく、背中に汗が滲んでくる。
「し、知ってるって、何を?」
「まだ、そんな事言うんだぁ? 夏休みで岡田君に会えないから、元気が無いんだとばっかり思ってたけど私の思い違いかぁ」
「それは……でも、いつから知ってたの?」
美沙にはすっかりお見通しのようで、私はあっさり降参することにした。
「もう、水くさいんだから。言ってくれれば、いくらでも協力したのに、今日子ってばいつまでたっても言ってこないんだもん」
美沙とは小学校からずっと一緒で、一番の友達だ。今まで隠し事をしたことはなかった。
なんでも相談したし、美沙もそうしてくれていた。
「隠すつもりじゃなかったんだけど、なんでかな? なんとなく言いそびれちゃって……ごめんね?」
どうして彼のことを話せなかったのか、自分でも良くわからなかった。
「それだけ本気だって事なんじゃない?」
そう言われて、頬が赤く染まっていくのを感じる。
「そう、なのかな……?」
 今まで人を好きになった事が無いわけじゃない。でも、彼に対する想いは今までとは、何か違っていた。
中学の時に好きになった人は、ただ見ているだけで幸せで、それ以上何かを望む事なんて無かった。
でも今は、岡田君に対しては、違った。
見ているだけじゃ苦しくて、息さえも出来なくなっちゃうんじゃないかって思う。
自分の中から気持ちが溢れ出してしまいそうで……
もっと彼を知りたい!もっと私を知って欲しい!
そんな想いでいっぱいになって、彼を想うだけで涙が出てきそうになる。
なんて、美沙に言ったら「おおげさだな」って笑うかな?
「でも、いきなり花火に誘うなんて無理だよぉ……あんまり話した事も無いのに」
 確かに、岡田君と一緒に花火が出来たらすっごい嬉しいけど、私から誘うなんて死んでも出来ない。
 サバサバした性格の美沙は、男の子達とも仲がいいから、抵抗ないかもしれないけど……
「それなら大丈夫! 私にいい案があるんだよね」
「いい案? なになに?」
美沙はなんだかとっても楽しそうにしている。
「まぁそれは明日のお楽しみ♪」

       ****

「気をつけて行ってらっしゃい。美沙ちゃんのお母さんにもよろしくね」
「いってきまーす」
 ママには美沙と一緒に宿題をするって言ってある。
 ウソつくのはちょっと罪悪感だけど、これも娘の恋のためだと思って、許してねママ!
 玄関を出ると、夏特有の夜の匂いがして、湿気を含んだ空気が身体を通り抜けていく。
愛車の原付に乗って、美沙との待ち合わせ場所へと向かう。
 本当に岡田君、来るのかなぁ……
 どうしよーっ!!
自分でも何がどうしようなのか、わからなかった。
来てくれなかったらどうしよう、でも、来てたらどうしよう……
どっちにしても「どうしよう……」な心境だった。
 親にウソをついて外出するのも、夜に男の子と一緒に遊ぶのもすべてが初めてのことで、
期待や不安や罪悪感が入り混じって、なんかとってもハイテンションになっていた。
 十分ほどで、待ち合わせ場所に到着すると、美沙はもうそこにいた。
「ごめーん。待たせた」
「私も今来たとこだから大丈夫。あ、あと奈々と知美にも声かけといた」
学校の仲良しグループが揃うと知って、心強かった。
「ありがとー!」
さすが美沙、頼りになる。
「だって、女二人で花火じゃ怪しいじゃん?」
「二人って、男の子達は……?」
美沙の言葉に嫌な予感がして、不安になる。
「大丈夫だって。海岸で、落ち合う事になってるから。しかも、偶然会う予定」
「え?」
言葉の意味が理解できずにいる私に、美沙は軽くウィンクしてみせた。
 偶然?落ち合うのに、偶然って……?
「お待たせー」
そこに、奈々と知美も合流し、私は考える暇も無く、そのまま海岸へと向かう事になった。

 海岸が近づくにつれ、私の心臓はうるさい位に高鳴っていた。
 もう、来てたらどうしよう。どんな顔して会えばいいのかわかんないっ!
海岸に着いたが、まだ他に人影はなくてちょっと安心する。
「健太達は、まだ来てないみたいだね。」
美沙がそう言い、落ち合うと言ってたのは彼女の幼馴染だったと知る。
「健太君と待ち合わせだったんだ?」
「うん。大丈夫、健太に岡田君も連れてきてもらうことになってるから。安心しなって」
 そういえば、健太君も岡田君と同じサッカー部だったっけ。
そんな事を今更ながらに思い出した。
「美沙、今日子ー。この辺でやろうか」
奈々達が防波堤の上から声をかけてきた。
「あれ? 待たなくていいの?」
 ここで、待ち合わせ、だよね?
「ん? あぁ大丈夫。言ったじゃん? 健太達とはここで、『偶然』会う事になってるから」
美沙の言葉に、唖然としているのは私だけで、どうやら奈々と知美は知ってたみたいだった。
 さっきの言葉はそういう意味だったのね……
昨日、美沙が楽しそうにしていたのを思い出した。
どうやら、健太君に協力してもらって、岡田君をここに連れてきてもらう事になっているらしい。
「って、まさか健太君に言っちゃったのっ?!」
「まっさか。健太には上手く言ってあるから心配しなくても大丈夫。あ、でも奈々達には言ちゃったけど……?」
美沙が奈々と知美を見る。
 まぁそれは協力してもらう以上は黙っておけないし、どっちにしても私から言うつもりだったから、気にはならなかった。
 さすがに、男の子達にばれるのは勘弁してもらいたいけどね。
「今日子、水くさいよー」
「本当だよ。美沙に聞いてちょっとショックだったな」
奈々と知美は口々に不満を漏らしたが、その顔は笑っていて全然気にしてるようではない。
「ごめんって。美沙にも昨日同じ事言われちゃった」
申し訳なく思いながらも、3人の友情には本当に感謝していた。
きっと、一人で悩んでいたら、こんなチャンスに恵まれる事は無かったと思うから。
そうこうしているうちに、遠くのほうから数人の話し声が聞こえてきた。
「あ、来たんじゃない?」
奈々が小さい声でそう言った。
「偶然会った振りだからねっ!」
美沙がそう言い、私達は知らない振りをしながら花火に火をつける。
「お、花火やってる人いるじゃん」
徐々に近づいてくる話し声に、私は花火どころじゃなくなっていた。
出来る事なら、この場から逃げ出したい気分でいっぱいになる。
「あ、美沙じゃん!」
真っ先に声をかけて来たのは健太君だった。
「偶然だね~ 何してるの?」
「野郎四人で寂しく、この夏の思い出作りに、花火でも……って、美沙達も花火か」
用意した台詞とは思えない位、自然に話している二人を尊敬してしまう。
健太君の後ろに岡田君の姿を見つけて、私は固まってしまった。
「どうせなら皆でやろっか?」
奈々や知美も加わり、自然とそういう流れになっていった。
 ど、どうしよう……
手に持っていた花火が終わると、急に手持ち無沙汰になっちゃって、かなり困る。
「俺達、打ち上げ花火いっぱい持ってきたから、ガンガン上げよう~!」
健太君が、持っていた袋から次々と打ち上げ花火を取り出し、防波堤に並べていく。
(ほら、今日子。ちゃんと岡田君に話しかけるんだよ?お近づきになるチャンスだからね!)
美沙がこっそり、耳打ちしてきた。
 そ、そうだよねっ!美沙たちの好意を無駄にしちゃダメだよね!
とは言うものの、岡田君を横目で見るのが精一杯で、話しかける勇気を出せないでいた。
その時、ピューン!と音が鳴り、夏の夜空に赤い光が瞬いた。
急に鳴ったその音に驚いて、思わず隣の人の服にしがみつく。
「び、びっくりしたぁ……」
ふと視線を上げると、なんと岡田君っ!!
 キャー!!どさくさに紛れて触っちゃったっ!(服だけど……)
引っ張られた事に気が付いて、岡田君がこっちを見る。
瞬間、呼吸も上手く出来なくなった私に、岡田君が不思議そうな視線を向けている。
 な、何か話さなくっちゃ……えっと、えっと……
そうは思うものの、胸がいっぱいで、言葉にならない。
そうこうしているうちに第二弾、第三弾の花火が次々と上がっていき、岡田君の意識もそっちに向いてしまった。
 ダメだな、私……
自分の不甲斐なさに自己嫌悪していると、美沙に肘をつつかれる。
(今日子、あれ)
そう耳打ちされて、美沙の視線を辿ると、岡田君の手に小さい火ぶくれが出来ているのに気が付いた。
 あっ、こんな事もあるかもしれないって、持ってて良かった。絆創膏!
 美沙、感謝~!
いつか必要になったらすぐに渡せるようにと、いつもバックの中に忍ばせていた絆創膏が、ついに役に立つときがきたのだ。
ドキドキしながら取り出してみると、あまりにも長い間狭い場所で出番を待っていたそれは、もうボロボロで、とても彼に渡せるような状態ではなかった。
膨らんだ風船がしぼむみたいに、私の気持ちも一気にしぼんでいき、自分の不甲斐なさに涙が一粒こぼれてしまう。
みんなに不審に思われないように「煙がはいったぁ~!」とごまかすのが精一杯だった。
そんな私の様子に、誰も気が付かないまま時間はどんどん過ぎていった。
「おっし、これラストー!」
最後の花火に火が点けられ、夜空を明るく照らし儚く消えていく。

結局、岡田君とは何の進展もないまま、解散となってしまった。
「なんかごめんね。せっかく美沙達が色々考えてくれたっていうのに……」
帰り道、解散場所まで来て私はそう切り出した。
笑って言うつもりが失敗して、泣き笑いのような表情になってしまった。
「そんな事気にしなくていいんだよ!」
「ありがとね。お近づきにはなれなかったけど、美沙達のおかげでこの夏一番の思い出が出来ちゃった」
今度はしっかり笑顔で言う事が出来た。
そんな私の様子に美沙達にも安堵の表情が浮かぶ。
「それじゃ、ここで。またね!」
美沙達に別れを告げて、原付に乗り込み家路に向かう。
涙が次から次へと込み上げてきて、視界が霞んでよく見えなかったけど、私は構わず走り続けた。
夜風には、微かに秋の気配がして夏の終わりを告げようとしていた。

 
        
                               TOPに戻る

1クリックが元気の素です♪

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村  ランキング参加中♪

|

« 怒るのにもエネルギー使います(長文注意 | トップページ | うっかり »

小説」カテゴリの記事

コメント

>狼皮のスイーツマン様
とっても素敵なコメントありがとうございます!
>花火のような、そんな一瞬って素敵ですよね。
儚くて懐かしいような感じを感じていただけたみたいで嬉しいです^^

投稿: 柊かえで | 2009年8月14日 (金) 21時24分

 免疫のない女の子っていいなあ。いつまでもこのままではいけないけれど、花火のような、そんな一瞬って素敵ですよね。

投稿: 狼皮のスイーツマン | 2009年8月14日 (金) 20時39分

>いき♂様
男の子目線での感想、新鮮です^^
なるほど~って思いました

>淡くてちょっともどかしい、初々しい恋心。
そこを感じ取っていただけてなによりです(*^-^)
柊も「そんな頃があったな~」って感じですw

投稿: 柊かえで | 2009年6月23日 (火) 22時24分

男の子目線で見てしまいました(^^)
「あれ、この娘、俺に何か話があるのかな?」
どきどき
「なんだ、俺の思い過ごしか……」
がっかり

みたいな(^^;
淡くてちょっともどかしい、初々しい恋心。
そんなときもあったなー(遠い目)
それもまた、素敵な思い出の一ページです♪

投稿: いき♂ | 2009年6月23日 (火) 19時44分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 短編 「花火」:

« 怒るのにもエネルギー使います(長文注意 | トップページ | うっかり »