« 教育相談 | トップページ | 拍手のお返事 »

2009年12月 9日 (水)

氷の伯爵と桜色の風 ♯21

☆もくじへ☆

 決死の覚悟で想いを告げたアンナは、ジェリーの冷たい反応に覚悟はしていたものの、傷心のため息をついた。 
「私、あなたにそこまで嫌われてるとも知らずに、バカだよね。困らせちゃってごめんなさい。でも、ルークとの婚約の話しは無かった事にしてもらいます。それが無理なら、パーシヴァルの家も出る」
居たたまれない表情のアンナは、吐き出すようにそう言うと、ジェリーが立ち去るよりも早くその場から立ち去ろうとする。
「家を出る? 何を馬鹿なことを……」
そんなジェリーの言葉には耳を貸さず、顔を伏せたままアンナが彼の横を通り過ぎようとした時、ふいに腕を掴まれ、そのままジェリーの腕の中に囚われた。
 突然もたらされた温もりに、呼吸をする事さえも忘れてしまいそうになる。
アンナは反射的に振りほどこうとするが、しっかりと抱きしめられていて動くに動けなかった。
「嫌いになれたらどんなに楽か……」
「え……?!」
喉の奥から搾り出すように言ったジェリーの切なげな表情は、抱きすくめられたアンナからは見えないが、その言葉に思わず身体の力を抜く。
「ジェリー……?」
いつもの違うジェリーの様子に、アンナの声は不安に揺れる。
「もう、イヤだって言っても離さない。あとで後悔しても知らないからな」
ジェリーは何かを決意したようにそう言うと、そのままアンナの手を取り歩き出した。
「ちょ、ちょっと?! どこに行くの?」
混乱したアンナのそんな問いかけにも無言のまま、かつて自分の母の葬儀が執り行われた教会の方へと向かって行く。
 そこにに待たせてあった、カークランド家の紋章が入った馬車にアンナを乗り込ませると、ジェリーは短く行き先だけを告げ、その後は黙り込んでしまった。

 アンナは、沈黙が支配した馬車の中で、まるで攫われるように馬車に乗せられてすっかり混乱しているというのに、自分とは対照的に何も無かったように落ち着いた様子で、いつもと変わらず神々しいほどのオーラを纏わせたまま涼しい顔でいるジェリーに、だんだん腹が立ってきていた。
「あ、あのっ!」
「ん? なんだ」
「なんだじゃないわよ! 一体、どういうつもりなのか説明して」
てっきり自分は嫌われてしまっているのだと思った矢先の急展開に、アンナの気持ちが付いていくわけも無く、自然と口調は厳しいものになっている。
「アンナ。伯爵夫人になる覚悟はあるか?」
まったく人の話を聞いていないジェリーの様子に、アンナはしばらく沈黙する。
 乗っている馬車の走る音が、やけに遠くに聞こえていた。
ようやく少しずつ回り始めた思考で、ジェリーの言葉を反芻する。
「伯爵夫人になる……それって……」
「もちろんプロポーズだ。もう、離さないって言っただろう?」
ジェリーのとどめの一言に、アンナの回り始めた思考は、いよいよショートしそうになっていた。
「えっ?! え? えーっ!!」
「なんだ、やっぱりイヤなのか?」
言葉ではそう問いながらも、ジェリーの表情は自信に満ち溢れている。
 そんなジェリーの言動をアンナが理解するのは難しいだろう。
なにせ、他でもないジェリー自身がルークとアンナを婚約させようとしていたはずなのに、今度は自分と結婚してくれ言い出したのだから無理も無かった。
「嫌だとかそういう問題じゃ…… あなたは、私とルークを婚約させようとしてたんでしょ。それが、なぜ急にそんな事を言い出すの? こんな納得のいかない状況で、プロポーズされても嬉しくないわ」
大好きな人の妻になる。それほど嬉しい事は無いはずなのに、そこでうっとりと頷けるほどアンナはお嬢様ではなかった。
つい見入ってしまいそうになるダークブルーの瞳を真っ直ぐ見据えて、ジェリーからの返答を待った。
真っ直ぐに見つめられたジェリーの表情が、宝物を見つけた少年のように崩れていく。
「それでこそアンナだ」
「どういう事?」
「さて、どこから話そうか。おれは自分の話しをするのが苦手でね」
そう言ってジェリーが語りだしたのは、二人が短い出逢いをした少し後の話しだった。

TOPに戻る

1クリックが元気の素です♪

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村 ランキング参加中

|

« 教育相談 | トップページ | 拍手のお返事 »

小説」カテゴリの記事

コメント

>狼皮のスイーツマン様
超久々の更新になってしまったにも関わらす、コメントありがとうございます^^
実は、この回に告白のシーンを持ってくる予定ではなかったのですが、書いているうちに「あれ・・・?」って感じで気がついたら告白してました^^;

投稿: 柊かえで | 2009年12月19日 (土) 23時55分

おお、久方ぶりの更新とおもいきや
告白がきましたねえ。

過去話
玉手箱をあけるような心境です。

投稿: 狼皮のスイーツマン | 2009年12月19日 (土) 07時15分

>長峯えり子様
はい、やっとです!><b
ジェリー不思議ですか?w
アンナへの温かいお言葉、ありがとうございます^^

投稿: 柊かえで | 2009年12月16日 (水) 09時07分

わ~~い!!
やっとでた!!
プロポーズすてきですねぇ。

ジェリー不思議な人物だ・・・。
アンナこれからもがんばって。

投稿: 長峯えり子 | 2009年12月15日 (火) 22時25分

>ゆきがさね様
柊の予想では、伯爵家の男はB型ですね!
(偏見?^^;)
俺様キャラがB型に見えるのは柊だけでしょうか?w

投稿: 柊かえで | 2009年12月10日 (木) 13時16分

>いき♂様
次話はその過去話になる予定です^^
ここまで長かったー><;
こんなにも不定期更新なのに
辛抱強く見守って頂けてすごく嬉しいです(*^.^*)

投稿: 柊かえで | 2009年12月10日 (木) 13時14分

ついにキターーー!
伯爵家の男共は人の話し聞かないのがデフォなのですね^^
ジェリーが格好いいのに、ついわらってしまう・・・

投稿: ゆきがさね | 2009年12月10日 (木) 11時09分

> 「アンナ。伯爵夫人になる覚悟はあるか?」

キタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!

というか、その台詞さえ計算ずくとはさすがジェリー。
過去話、気になります。

投稿: いき♂ | 2009年12月 9日 (水) 19時13分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 氷の伯爵と桜色の風 ♯21:

« 教育相談 | トップページ | 拍手のお返事 »